抗議文
昭和20年8月9日、日ソ中立条約を一方的に破棄したソ連は、我が国に宣戦を布告し、ソ満国境に侵攻した。やがて、我が国固有の領土である南樺太及び千島列島を不法にも占領し、我が同胞を虐殺、婦女子を陵辱、果てはシベリアに長期抑留するなど、暴虐の限りを尽くした。以来、57年を経た今もなお、侵犯された国境線は一ミリたりとも、原状復帰はなされていない。ロシア連邦共和国はソ連の正統な継承国であり、我々は貴国に対し、南樺太及び全千島の即時返還を要求するものである。
米英とのヤルタ密約に基づき、貴国は超大国として、アメリカ覇権主義と有無相通じ、世界の分割支配を目論んで来た。かかる行為は、全世界の民族自決を踏みにじるものに他ならない。冷戦終結、そしてソ連崩壊後もなお、我が国固有の領土に居座り続けることは、ソ連に替わる新たな覇権主義国家として、今後も日本民族の自決権を脅かし続けることに他ならないのである。
先般のサミットにおいて、貴国はG8のメンバーとして列せられた。また、NATOの準加盟国として迎え入れられようとしている。このような餌を与えられ、アメリカによる一極支配を補完するならば、自立を志す全世界の民族からの怨嗟に晒されることになるであろう。昨年の9.11と同様のテロが、モスクワで起きない保証はない。
パレスチナ人民の怒りの決起によって、根底的に動揺したアメリカは、貴国にすり寄ることで、安定的な原油の供給を求めている。さらに、イラク攻撃を画策するアメリカは、貴国とイラクを分断しようとしている。このように、アメリカに玩弄されることは、ロシア国民にとって恥辱的ではないのか? ロシア自身の覇権主義とアメリカ覇権主義との結託は、ロシアがアメリカの補完物に成り下がることを結果する。さらには、グローバリズムに蚕食され、ロシアはその独自性を喪失するであろう。
ロシア国民が真に民族的自尊心を取り戻すためには、南樺太及び全千島を即時返還し、日露間のクサビを除去することである。ヤルタ密約なる汚辱を払拭しなければならないのである。
将来において、日米安保を破棄した我が国と、領土を返還した貴国との間には、重大な懸案事項は消滅する。その第一歩として、南樺太及び全千島の返還にただちに応じなければならない。日露両国民の未来のために。
ロシア連邦共和国大統領
ウラジーミル・ウラジーミロヴィッチ・プーチン殿